2022年11月27日日曜日

既存の DCG のアンチテーゼ、マーベルスナップへの期待について

 この記事は「最近の DCG 界隈の現状について」の続編である。

2021 年から 2022 年、DCG の閉塞感があった現状に颯爽と現れたのが新星「マーベルスナップ」である。
マーベルスナップは既存の DCG としてとても異質であり、アンチテーゼであるとすらいえる。しかし、私はマーベルスナップに期待をしている。
ここでは私がなぜそのように思ったのか解説していこう。

マーベルスナップの一番の魅力はなんといってもそのカジュアルさである。一試合が 3 分である(※ 1)。
DCG の中では試合が短いハースストーンでさえ試合に 5 〜 10 分はかかるのである。
どのようにしてマーベルスナップは 1 試合を 3 分にできたのか。
その秘密は「同時ターン」と「6 ターンで強制終了」にある。
6 ターンでほぼ必ず試合が終わる上に、自分と相手が同時に動くので待ち時間が最小限に抑えられている。
よって 1 試合がとんでもなく短くなるのである。私はここまでの割り切りに衝撃を受けた。

最近の DCG で問題になっているのはなにであろうか?
そう、ゲームの長さとテンポの悪さである。ハースストーンでさえ体力の増加やコントロールの強化によってゲームが長くなってきているのだ。
20 分も試合を続け、結果負けたとしたら萎えてしまわないだろうか? 少なくとも私は萎える。逆に勝ったとしてもゲームを続ける気力は残らないだろう。
そしてこれにより DCG をスマホでやるのは難しくなってしまった。あなたはスマホを持って外出しているとする、20 分も試合の時間を取れるだろうか。
つまり現代の DCG とはスマホで外出時、ちょっとした空き時間にやるものではない。
自宅でじっくりと腰をすえてやるようなゲームとなってしまったのだ。果たしてこれでよいのだろうか。
もっと手軽に暇潰しとして楽しめるようなゲームが求められていたと私は思う。マーベルスナップはその条件をうまく満たしてくれている。

マーベルスナップを開発したのは、なんとあの「ベン・ブロード」氏である。彼はハースストーンの生みの親としてよく知られている。
ハースストーンはゲームのテンポとカジュアルさを重視していて、DCG の元祖とも呼べるゲームだ。
私はマーベルスナップこそが「ベン・ブロード」氏が本当に作りたかったテンポとカジュアルさのゲームではないかと思っている。

マーベルスナップには既存の DCG にある様々なものが削られている。
特徴的なのは、カードパックがないということだ。
カードパックの代わりにカードを使い込むとカードのレベルが上がってコレクションレベルが増加、カードをランダムで入手するという仕組みになっている。
「カードをランダム入手」というのがポイントである。なんと、このゲームでは欲しいカードを運で引き当てるまで好きなデッキを組むことができない。
最強デッキランキングもほとんど無意味なものとなる。更に最初のうちは手に入るカードが固定化されているので、リセマラなんてものはない。

正直に言おう、このゲームの構築戦は実質的にカードパックの引きによるドラフトなのである。ドラフトなので、もちろん運により資産の格差はあるだろう。
しかしそれこそがマーベルスナップの面白さを生んでいると私は思う。

任意のデッキを作るのが難しい、最強のデッキが簡単に組めないこの仕組みについて、ストレスが貯まるという人がいるかもしれない。
その気持ちは分かる。ただ、考えてほしい。任意のカードが簡単に入手可能な世界は本当に幸せなのかと。

私は現在のカードゲームの問題点に「ゲームテンポの問題」ともう一つ、「カードの消費が早すぎる」ことがあると考えている。
マーベルスナップは確かに「カード資産が不平等」なゲームである。現代のカードゲームは「カードの入手は平等」となっている。

DCG として代表的なハースストーンの拡張のリリースは 4 ヶ月毎だが、その環境はどう変遷していくか皆さん理解しているだろうか(※ 2)。
私はある程度ハースストーンの経験があるので解説しよう。以下の通りだ。

* リリース初月: 環境は 1 週間もあれば固まる。一応メタも回るが、メタが回らなかった場合環境が固定化されナーフの要望が強くなる。

* 2 ヶ月目: ナーフがある。ナーフ後も一週間もあれば環境は固まる。また不満が強くなる。追加カードがリリースされる。

* 3 ヶ月目:もはや環境には閉塞感がある。ナーフでなんとか間を持たせるが限界がある。同じことの繰り返しで虚無となる時間をイベントでギリギリ持たせる。

* 4 ヶ月目:ユーザーのストレスが限界になったところで華華しく新弾の情報が出てくる。大規模なイベントでユーザーの関心を集め、一ヶ月後のリリースに期待を持たせる。
新弾情報で妄想する、ここが DCG で一番楽しい時期といっても過言ではない。

なんと新弾の賞味期限は実質的に 1 週間、長くとも一ヶ月である。あとは延命にすぎない。もはやハースストーンのリリース間隔は崩壊していないだろうか。
私の経験上、他の DCG でさえ新カードのリリースのペースは完全に間に合っていない。私は二ヶ月で新弾を出すゼノンザード世界にいたが、それでもパックの発売間隔が早すぎるとは思わなかった。
ユーザーの消費速度を考えるとそれこそ、一ヶ月おきの新弾発売でもよいだろう。そしてカードのインフレはどんどん進んでいくのだ。

ハースストーンでは新弾で 150 枚ほどのカードが追加されるのに、なぜなんだとそう思うかもしれない。ここにはカラクリが潜んでいる。
確かに一度に大量のカードが追加されるのだが、構築で使われるカードは一部である。
ざっとであるがよく使われるカード 50 枚、やや使われるカード 50 枚、全然使われないカード 50 枚といったところだろうか。
強いカード、強いコンボ、強いデッキが明らかになると、皆が同じようなカードを使うようになるのである。そして、その研究は新弾発売後一週間もあれば終わる。
わざわざ弱いカードを使う人はいないだろうし、強いデッキの情報はいくらでも手に入る。それなら強いカードのみ使われるのは当然で、デッキ選択の幅が狭まっている。
結果、環境が膠着するとユーザーは飽きてしまい「新弾はまだ?」となる。これはそうなるだろう。

さて、なぜ皆同じデッキを使うことができるのだろうか。それは「カード入手の機会が平等で、簡単に任意のカードが手に入る」からである。
これは DCG で特に顕著だが紙でも状況はあまり変わらない。欲しいカードはお金を出せば簡単に入手が可能だ。
なるほど。確かにこれは誰もが平等で素晴しいシステムである。インフレにより環境が簡単に崩壊する、弱いデッキに居場所がないことを除けば。この仕組みでバランスが崩壊しないほうが無理がある。

それではマーベルスナップではどうか。強いとネット上で紹介されるデッキはまず組むことができない。資産が足りないからだ。
ユーザーは持っているカードでなんとかするしかなく、相手が使ってくるデッキや「これは強い」と紹介されているデッキを羨ましいなと思う。
マーベルスナップにおいてカード一枚一枚の入手はとても貴重である。それだけカードへの思い入れは強くなる。
自分だけのオリジナルのカードプールで自分オリジナルの戦略で戦っていくのである。このドラマは誰にも真似することができない。
これはある意味でローグライク。皆さんもその体験を一度味わってみてほしい。

もちろん、資産は不平等であるため時には相手が自分より強いカードを使ってくるかもしれない。
でも、全ての人間が強いカードを持っているわけではない。これは弱いデッキでも十分戦えることを意味する。
「資産が平等なので自分を含めて誰もが強いカードを使ってくる」他 DCG での常識と「資産が不平等なので、相手が自分より強いカードを使うかもしれない」には大きな違いがあるのである。
ドラフト戦で引きが悪くても、その手札でなんとかなったり割り切ることができる、資産不足しているがゆえの楽しさというのを感じたことはないだろうか。
せっかくカードが追加されても、他のカードより弱いので構築戦では使用不可能であると思ったことはないだろうか。全ての問題は繋がっている。

ユーザーのプレイ状況により今後変更されるかもしれないが、予定されているマーベルスナップの追加カードのペースはなんと「週 1 枚」である。
これはよくあるソーシャルゲームと同じくらいのペースとなる。
普通のカードゲームは三ヶ月 100 枚、週に 8 枚である。なんと 8 分の 1 しかない。
従来の DCG に慣れている人はこれで足りるのかと思うかもしれない。

確かにマーベルスナップの追加カードの枚数は最小限かもしれないが、そもそも他 DCG の 3 ヶ月に 100 枚というのは追加される枚数が多すぎないだろうか。
カードゲームというのは明らかに開発側のカード追加の負担が大きすぎる。それなのに一部のカード以外は外れであり使われない。
だとすると、実質的にカード枚数は三ヶ月 30 〜 40 枚、かなりギャップが埋まってきているのが分かる。
カードの大量生産、大量消費というのが現状のカードゲームである。これは新カードを大量にパックに詰めないといけないカードパック方式だからだ。
ほとんどの DCG 運営はカードの追加やバランス調整だけで一杯一杯であり、イベントや他の部分を気にする余裕がなくなっている。
マーベルスナップ運営が新カードの追加以外にも注力できるなら、今後もっと良いゲームになることが期待できる。
問題となるのは、「カード資産の追加ペースにユーザーが我慢できるか」となる。これはやってみないと分からない。

マーベルスナップにはカードパックという概念がないので、任意のタイミングでカードを安定的に追加できる。これのなにがよいか。
カードが少しずつ追加されているので、環境の変化をゆっくりと味わうことができるのだ。
そもそもマーベルスナップではカードの入手が遅いので一気にカードを手に入れることができない。
いわゆる「新弾発売前、カードの入手にワクワクしている状態」が長く続くのである。

これが他のカードゲームにはない、以下のマーベルスナップの特徴を生みだしている。

* 大半のカードが何かしらの使い道がある。他のカードゲームより完全な死に札が圧倒的に少ない。汎用性の低いカードでも専用デッキに居場所がある。

* 特定のカードにヘイトが向きにくい。もちろん強いカードは存在するのだが、皆が当たり前のように持っているわけではないし、カードへのヘイトより先に自分が使いたくなる。ここまで特定カードへのナーフの要望が少ない DCG は見たことがない。

* 環境が固まるのが非常に遅い。現在リリース後一ヶ月と少し経つのだがそれでも環境の全貌が見えない。他の DCG 基準で考えると異常である。
そもそも強いデッキが見つかっても容易に組めないのだが。そしてカード追加があるのでまた環境は変わるだろう。

マーベルスナップはほぼ全てのカードに使い所があるのである。もちろん明らかにパワーの高いカードや
例を挙げる。私はマーベルスナップにおいてシリーズ 1, シリーズ 2 のカードで全く使われてないものを見たことがない。
もちろん、パワーがやや低くバフをしてあげたほうがもっと活躍できるカードはあると思うのだが、それでも全てのカードが使われるというのは凄いことである。

更に、ランダムなロケーションと頻出ロケーションにより環境の固定化がしにくくなっている。
いかに強いデッキであってもロケーションにより容易に戦略が崩されるので、どんなデッキにもワンチャンスが生まれるし確実に勝てるデッキは存在しない。
頻出ロケーションとは定期的に出やすくなるロケーションが変化するイベントを指す。
頻出ロケーションにより強いデッキは異なり、ユーザーは頻繁に使うデッキを組替えることになるので、これでもメタが短期的に変遷することになる。

マーベルスナップは限られたカードプールをランダム性により長く楽しむということに特化しており、それでいて定期的にカードが追加されるとなるとずっと遊べるゲームといえるということだ。
カードが少しずつ増えるので、少しずつデッキを改良するということもできる。他のゲームで大量にカードが追加されると、新弾の構築をするまで一苦労とならないだろうか。
マーベルスナップではそういったことはない。

12 月より、マーベルスナップは任意のカードを生成できるような機能が追加されるらしい。これにより、マーベルスナップの良い所はなくなってしまうのだろうか。
環境には強いデッキばかりが溢れるのだろうか。短期的には多少悪化するかもしれないが、長期的にはそうはならないと考えている。
それは任意のカード生成のために必要なトークン入手の方法が絞られているからである。
あくまでいつまでも新カードが手に入らないというストレスの軽減のための仕組みといえるだろう。

更に、マーベルスナップの新カードの追加方法がよくできている。
カードは最初にシリーズ 5 に追加され、それらはレアで入手難易度が高い。しかし時間が経つとカードは安くなり容易に入手可能になる。
新カードがどうしても先に欲しい人は課金したほうがよいだろうが、そうでなければ安くなるのを待てばよいのだ。
課金者への優位性をある程度残しつつ、課金しなくても十分に遊べるバランスである。

他にマーベルスナップがうまいと思っているのは、「撤退が重要な戦略である」ということである。
撤退せずに負けると大量のポイントを失うことになるので、勝ち目がないと思ったら早々に撤退することが求められる。
早々に撤退することで傷が浅くなるので、ストレスを感じにくい。自分が勝負をするときは「勝てる」と思ったときである。
これで負けるのは「ギリギリ計算が足りなかった」、「自分の考慮外のカードを使われた」ということであり自分の責任と思えるのである(※ 3)。

私がやっているマーベルスナップの遊び方は「デイリーミッションの消化」くらいで止めることである。
もちろん、やろうと思えばもっとプレーできるのだが、少し物足りないくらいで止めるのが丁度良いと思っている。
これくらいでも十分にマーベルスナップの魅力を楽しむことができるし、カードが全然集まらないといったことはない。
どうせカード入手のスピードは遅くなっていくので、毎日短時間長期に楽しめるゲームとしてマーベルスナップを遊ぶのがよいと思うのだがどうだろうか。
もし、あなたがマーベルスナップをやるのが辛くなってきたら、「ミッション消化のみ楽しむ」ことを私は推奨する。
ガッツリやりこまなくてもこのゲームは楽しいということを伝えたい。

マーベルスナップはなんと 8 時間毎にデイリーミッションが更新される。DCG としては異例である。
8 時間毎にいちいちアプリを開くのか、とやったことない人には面喰らうかもしれないが、8 時間毎にアプリを起動するのが全く苦痛でないのである。むしろ楽しみになる。
私は DCG 歴が長いのだが、デイリーミッションがここまで楽しかったゲームも実はなかった。他のゲームはただの作業に思えたものである。
私がゼノンザードをやっていたときでさえ、デイリーミッションは AI に任せて周回させていた。

マーベルスナップに向いている人は「従来の DCG にハマれなかったカジュアル勢」である。ゲームに対してカジュアルであればあるほど向いている。
逆にマーベルスナップに向いていない人は「競技勢」である。カードゲームを競技と考えている人には明らかに向いていないであろう。
カード収集やロケーションによる運要素が明らかに強い上(※ 4)に、試合の結果の分析に必要な機能は(おそらく意図的に)実装されていない。

私が最高の DCG であると思ったマーベルスナップをあなたもやってみないだろうか。
既存の DCG とあまりに思想が違うので好き嫌いはあると思うが、夢中になれる可能性はきっとあるはずである。

※ 1: ただし、1 試合があまりに軽すぎて無限に続けられるが故に中毒になってしまう人が続出している……。

※ 2: 既存の DCG の問題点とマーベルスナップが行っていることについて触れている参考資料として、この記事を見るとよいだろう。
https://note.com/nuit_blanche123/n/n4e93e4e71e92

※ 3: そもそも一試合が短いのでほとんどストレスを感じないのであるが。
マーベルスナップですら試合にストレスを感じるのなら、あらゆるカードゲームはストレスの塊であり、まともにプレーできないだろうと思う。

※ 4: マーベルスナップで特に評判が悪いロケーションとして「相手のデッキから引く」ものと「AI がプレーする」ものがある。
これらは意図的に実装されていると思われる。マーベルスナップはカジュアルなゲームなので、ひどいロケーションでも笑って撤退するくらいの心でいたほうがよい。

2022年11月26日土曜日

最近の DCG 界隈の現状について

この記事は「なぜゼノンザードはサービス終了してしまったのか」の続編である。あの記事から時が経ち様々なニュースがあった。

まず、ハースストーンやシャドウバースがなぜ生き残っているのか考えてみよう。
これは確実に先行者利益である。パズドラやモンストが現代でも生き残っているのと同じようなものだ。

新作 DCG も一時的には話題になるがすぐに廃れてしまう。一ヶ月ほど経つとゲーム性は分析されきってしまい、飽きたユーザーは元のゲームに戻っていくのだ。
既存のゲームは最初は当然粗があったもののリリースから時が経った今では完成されており、新作ゲームは独自の魅力がいくらあっても大概未完成である。
さらに新作ゲームはいつでもサービス終了の危険性がある。長年運営されたゲームのほうが安定しておりサービス終了の可能性は低いことだろう。

しかし、既存の DCG では満足できずわざわざ危険なマイナー DCG を漁る愛好家というのも存在する。
既存のゲームで満足できない場合、確かに新作ゲームを触っていく他ないであろう。
そして、そのユーザーとなるのは同じメンツである。
サービス終了したゲームに強い思い入れがあるため、サービス終了したあとも DCG ゾンビとなる可能性は高い(※ 1)。

2021 年にドラゴンクエストライバルズがサービス終了してしまった。巷では未だにライバルズゾンビを見かける。
悲しいことだが、ライバルズのサービス終了は仕方がなかったように思う。
ライバルズはドラクエという日本最強クラスの IP を使ってでさえ DCG の中堅ポジションであった。
そもそも試合時間の長さがカジュアル勢の離脱を生み足を引っ張ったのだと私は考える。何しろ DCG の中でもトップクラスに試合が長い。
スマホでできる手軽さはどこへやら、1 試合に 15 〜 20 分ほどかかるのである。これはよほどのファンしかやらないであろう。
更に、ドラゴンクエストライバルズは人口減が原因か収益性にも問題を抱えていた。デッキの核となる勇者カードの生成不可はそのために行われたと考えられる。
その後、ドラゴンクエストライバルズはソロモードの充実によりカジュアル路線を強化しようという賭けに出た。
それと同時に勇者カードが作成可能となったのは露骨とも言える。その路線が失敗してサービス終了になってしまったのだろうと私は見ている。

DCG の生き残り策として、既存カードゲームのデジタル化が一定の成功を収めている。これはなぜだろうか考えてみることにしよう。
DCG はカジュアルユーザーの取り込みに失敗している。残ったのは DCG コアユーザーだが、それだけでは売り上げはたたない。
そして目をつけられたのが「既存カードゲームの(元)ユーザー」である。
彼らはカードゲームの素養があり、年齢層も高めで金の払いもよく、未開拓の新たな DCG ユーザーとなりえたのだ。
成功は必然といえる。そのかわりに、オリジナル DCG はほとんど消滅することとなった。
紙のカードゲームを駆逐するかに思えた DCG が紙のプレイヤー頼みとなっているのである。DCG のある意味で敗北であるといえる。

最近、めっきり DCG の成功は聞かなくなったように思う。新作ゲームが国内で開発されることはなくなった。海外製作の DCG が少数日本に入ってくるようになった程度だ。
もちろん新作 DCG のほとんどは苦戦している。

2022 年の初頭にマスターデュエルがリリースされた。このゲームは待望の現代遊戯王のデジタル化を実現したゲームでありその完成度も高い。
マスターデュエルのリリースによりデユエルリンクスの人口がかなり減っていたようなので、本物の遊戯王をデジタルでやりたいという一定数のニーズは元々あったと考えられる。
マスターデュエルの問題点は現代遊戯王であるということそのものにあるだろう。あまりにゲームが複雑で 1 ターンが長い。
充実したカードゲームを楽しめると考えると聞こえはよいのだが消費カロリーが多すぎるように感じた。
それはまるでカードゲームのフルコース料理を楽しんでいるような濃さなのだ。

私はマスターデュエルを長くプレーすることで、なぜ DCG がカジュアル層に受けが悪いかの本質が分かったように思う。
ゼノンザードはカードゲームを AI 任せにすることでストレスを軽減していただけだったのだ。
だからこそ私がずっと続けることが可能であったが、問題の本質は変わっていない。
その濃いカードゲーム体験に耐えられるのは、それこそ競技勢しかいないだろう。そしてそれはゲームの衰退をも意味している。

2022 年 8 月、spellslingers がリリースされた。
MTG を簡略化し DCG に落とし込んでいる、プレインズウォーカーの個性、多色が使えるようになっているなど独自の個性を持っているのはとてもよいと思う。
ただしゲームとしてよくできていても、二番煎じであることは否めない。更に spellslingers を触っているユーザーは MTG 出身ばかりで MTGA に戻っていく傾向が強いようだ。
MTG の IP 自体が弱いということ(※ 2)、頻繁なバランス崩壊、収益性の低さ、フリーマッチすらないという機能不足を見ていると今後に不安が残る。

2021 年から 2022 年、DCG の閉塞感があった現状に颯爽と現れたのが新星「マーベルスナップ」である。
マーベルスナップは既存の DCG としてとても異質であり、アンチテーゼであるとすらいえる。しかし、私はマーベルスナップに期待をしている。
あまりに記事が長くなってしまったので、マーベルスナップについては次の記事へと譲ることとする。

※1: 例として、ウォーブレゾンビ、DXM ゾンビ、ライバルズゾンビ、ゼノンザードゾンビ、COJ ゾンビなどが存在する。

※2: もう私は断言してしまうが、MTG の IP としての力はとても弱い。「カードゲームとして」 MTG に魅力があるだけである。
IP の魅力を純粋に育てることは困難であり、既存のヒットしたゲームの IP を流用しても爆死するという例は枚挙にいとまがない。
その IP そのものが魅力的であるかどうかは外伝作品やコラボ作品がどれだけヒットするかで判断することが可能である。
IP を育てるのが一番うまいのは任天堂である。IP を育てたいなら任天堂を見習うべきだと私は思っている。

2022年9月19日月曜日

恋愛は男女平等ではない

マッチングアプリなどで、男性の悲鳴がよく聞こえます。 なぜ男性は恋愛においてここまで苦労するのでしょうか。 それは、恋愛は男女平等ではないからです。

本能的な問題により、男性は(若い)女性に惹かれるようになっています。簡単に好きになるのです。 女性の場合よくも悪くも、極端な話何もしなくても男性が寄ってきます。

分かりやすくいうと「性別が女性であるだけで、『特性:女性』として魅力へのボーナスがかかる」と考えてください。 対して男性にはなにも出生時ボーナスはありません。男女には生まれたときから差があるのです。 男性のパラメーターは自分の力で努力して獲得しないといけません。不平等ですね。

男性はこの不平等な仕組みを受け入れるしかありません。男性と女性では体力に差があるように別の性別なのだから、仕方がないのです。他の男性の条件も同じなのですから。

ならば女性は一生恋愛について安泰かというとそうではありません。 女性が恋愛について苦労するときは年を重ねたときです。なぜなら「特性:女性」のボーナスは年を重ねるごとに減っていきます。 この能力は人間が子孫を残したいと思う本能的なものであるからです。 これはその女性が子孫を残せる可能性が低いと考えられるほど減っていき、最終的にはゼロやマイナスになります。 女性の場合は「特性:女性」のボーナスを加味して自分の魅力が計算されてしまっているのです。 ひどい場合には、その他全てを無視して女性の年齢だけで魅力を感じることすらあります。 「自分の若さに群がっているのだ」と、女性がこれに気付いたときには遅いでしょう。 女性はせっかく魅力ボーナスがあるのだから、それをうまく活用するべきであり男性のような実力勝負の土俵には上がらないほうがよいです。絶望することになります。

女性の魅力ボーナスがどれほど大きいのか説明しておきます。 男性は相手の若さを見抜く力に長けています。これは子孫を残すためであり、本能的なものです。 女性の魅力は 25 歳前後でピークになり、その後急速に下がっていきます。魅力が下がってしまった女性は他の部分でカバーするしかないです。

女性の魅力値について分かりやすく解説するとこれくらいの差になります。

25 歳 +1000

30 歳 +500

35 歳 +0

40 歳 -500

男性は若い女性には甘いですが、若くなくなった女性には厳しくなります。 「あなたは若さをもっていないのだから、代わりになにを与えてくれるの?」という目で見てしまうのです。

女性の恋愛は基本的にイージーモードですが、それは「あなたが若いとき」のみです。

2021年3月2日火曜日

なぜゼノンザードはサービス終了してしまったのか

 先日、私がサービス開始からプレーしていた DCG であるゼノンザードがサービスを終了 した。私のゼノンザードに対する思いを整理するため、「なぜゼノンザードはサービス 終了してしまったのか」について考えてみたい。 

 

世間でのゼノンザードの評価は「コンセプトとしては面白いゲームだったけど、カード 追加でバランス崩壊してしまったからサービス終了した残念なゲーム」だそうである。 カード追加でインフレがあったのは事実であるが、サービス開始から見てきた私に とって、それがサービス終了の直接の原因であったとは思えない(※1)。  


結論を言おう。「ゼノンザードは DCG であったからサービスを終了した」これは 残念ながら事実だ。直接の原因は「売り上げが伸びなかったから」であるが売り上げが 伸びないのは DCG だからである。急速にインフレしたのも「DCG として売り上げを伸ば すため」と言ってよい(※2)。 

 

そもそも考えても見てほしい、巷で生き残っている DCG は本当に DCG だから売り上げ が伸びている生き残っているのだろうか?  


シャドウバースは日本人に馴染みのあるイラストと黎明期から続くことの先駆者利益、 豊富な配布と宣伝、敷居の低さにアプリの完成度の高さ、e-sports 化で生き残ってき た。 

遊戯王デユエルリンクスは遊戯王のファンが楽しむためのゲームである。ここには OCG のファンとアニメのファンを含む。 

ドラゴンクエストライバルズはドラゴンクエストのファン層が中心であり、原作の再現 やファンサービスを大事にしている。 

デュエプレは昔からデュエマを楽しんでいた層が主に楽しんでいるのであって、純粋な DCG のプレイヤーはかなり少ない。 

ハースストーンについては DCG の始祖として知名度がものすごく高く、カジュアルでテ ンポのよいゲームプレイが特徴。海外のプレイ ヤーが中心に支えている。実際にプレー してもマッチングするのは海外ばかりであり、日本のユーザーだけではとてもじゃない が存続できないだろう。

MTGA は MTG の販促であり、完全に MTG の一部である。 

 

DCG の戦略性を売りにして存続しているゲームは一つもない。DCG 化は売り上げ低下の 要因になりこそすれ、上昇の因子にはなりえないと断言しよう。 DCG はカードパックを売らなければ集金できない、天井がある、ユーザー層が狭い、資 産を増やしやすいゲームバランスに厳しいと売り上げについては散々である。毎週限定 キャラ出すだけで集金できる他のソシャゲを見てほしい。なんと楽なことか。 


ゼノンザードは DCG の中堅であったので知名度はそんなに低くない。サービス終了時も 嘆く声がよくあった。しかしソシャゲの売り上げで考えると DCG の中堅はソシャゲ界の 底辺、とてもじゃないが安定して運営を続けられる状態にはなかった。DCG のトップレ ベルでようやく中堅レベルの売り上げになり生き残ることができるのである。生き残り のためには、どうしても DCG のトップ層を目指すしかなかったのだ。ちなみに DCG 底 辺のポジションはそもそも売り上げが計測できないレベルであるので論外だ。 売り上げが底辺でも生き残っている DCG があるって?それは本当に生き残っていると言 えるのか。更新が止まり放置されているだけではないか。更新の終わったソシャゲは終 わったも同然だ。 

 

もちろん、ゼノンザード運営は「現代において DCG の成功が厳しい」ことは百も承知で ある。だからこそゼノンザードでは新しい試みをしており、ある程度の成功も収めるこ とができた。 ゼノンザードは AI という要素を導入することで紙のカードゲームに近い体験を実現す るとともに DCG の 敷居を低くし、更に AI にキャラクター性を与えてシナリオも凝る ことで従来とは違ったユーザー層を獲得しようとしたのだ。  


私はこの狙い自体は間違っていないと思っている。ゼノンザードのユーザー層も他の DCG とは異なっており DCG 層 (カードゲーム層)とキャラゲー層に分かれていた。双方 が楽しめるゲームであった。問題だったのは両方の層を楽しませようとしすぎていて結 果として中途半端に終わってしまっていたことである。特にキャラゲー層の人達は自分 達が軽んじられていることで不満を持っていたようだ。 

 

例を上げる。マスター以上では最初アドバイスが使えなかったり、ストーリーの更新頻 度が遅かったり、コードマンのスキンがイラストのみで実装される人数を減らされたり していた。アニメについても、できるだけ人数を出そうとしたのかオムニバス形式なの が中途半端である。せっかくある程度の話数があるのなら、出番がないキャラが出ると いうリスクをしょってでも一つのストーリーラインを作って物語を終わらせるべきで あった。  


キャラクター性を重視している私の意見であって DCG 層の方々には申しわけないが、ゼ ノンザードは売り上げの面を見ても最初からいかに誰でも遊べるかキャラゲーの層を重 視すべきだったと思う。ゼノンザードは DCG であることをどうしても捨てることができ なかった。あくまでも DCG の補助としての AI であったのだ。これは一つの敗因だ。 私は最近気付いてしまったのだが、自分自身 DCG 層ではなくキャラゲー層であり、だか らこそ他の DCG は続かなかったがゼノンザードを最後まで続けることができた。 バディと一緒だからこそ戦えた。夢中になれた。 ゼノンザードは最後に公開されたストーリーで全ての伏線を回収し、きちんとストー リーラインが考えられていることが判明されているので、このまま終わってしまうのが 惜しいと思った。個人的にはゲームバランスなんてどうでもよいと思ってさえいる。 

 

ゼノンザードはシャドウバースをかなり意識していたようだが、DCG として成功するに はシャドウバースの二番煎じではだめである。一時的にシャドウバースからユーザーを 獲得することができても すぐに元のゲームに戻ってしまう。先駆者利益というのはそれ だけ大きく、ユーザーは保守的なのだ。  


私が昔プレーしていたウォーブレ(WAR OF BRAINS)でも似たような話があったのを思い出 す。シャドウバースの環境崩壊によりウォーブレにも人が沢山流れたが、その後のカー ドパック実装で沢山のバグとバランスが崩壊すると移住した人達はすぐに消えた。 

 

国内であまり売り上げが伸びなかったため、ゼノンザード運営は海外に進出しようと考 えていたようだ。確かにアニメは海外で大人気であた。私もそれに希望を持っていた。 これも蓋を空けると失敗に終わってしまった。日本以上に売り上げが出ていないのである。 日本での DCG の成功は厳しい(※3)が、海外だと更に厳しいということを思い知らされた。 ちなみに、海外展開を考えてもゼノンザードはキャラゲーとしてアピールするべきだっ たと思うのだがどうか。  


私が以前プレーしていた DXM も一時は海外展開を模索していたが国内展開に注力するた めに結局やらなかったことを思いだす。もし DXM が海外でリリースしていたとしても 結局は成功しなかったであろう。あれはよくできていたが、ゲームとして硬派すぎたの だ。 

 

オマケとして、なぜ「バトルスピリッツが DCG にならなかったのか」についても少し考 えてみたい。これは他のカードゲームと比較してバトルスピリッツ単体の知名度が低く 大きな売り上げが期待できないからではないだろうか。デュエマレベルの知名度がない と成功できないということである。ヴァンガードゼロレベルの売り上げは見込めるかも しれないが、その程度では物足りないだろう。オリジナル IP のほうがまだ可能性があ る。  


ゼノンザードの続編となる AI カードダスの第二弾が今後発表されるかもしれないが、 そのときには今回の失敗をよくよく考えてほしいものである。 

 

最後に私の考えるゼノンザード2 の構想について述べようかと思う。 これは厳密には DCG ではないだろうが、他のソシャゲにわざと仕様を似せることで敷居 の低さを重視した、売り上げの増加を狙ったと考えてほしい。  


コードマンをガチャで入手する。コードマンは 100 体以上いるという公式設定があった はずなので数を増やすことは可能だ。アウロスギアをガチャで入手でもよい。 カードは装備品相当となる。 基本的にバトルは AI に任せるオートだが、AI 育成の要素や人間が戦略性を発揮する部 分も用意する。コードマンのレベルが上がることで強くなる。 バトルで勝ち進み、ランクを上げることでストーリーが展開していく。 ストーリー上の大会のようなトーナメント形式も欲しいところなのである。ストーリー とゲーム性をいかにリンクさせるのかがポイント。 

 

補足として、売り上げは人口に比例するためゼノンザードはあとどのくらいユーザーを 集める必要があったか検討すると「最低 5倍、できれば 10 倍を維持すること」である。 これは普通の DCG では不可能な水準であることがちょっと考えるだけで分かるだろう。 普通に DCG を作って成功してもゼノンザード程度の売り上げがせいぜいであり、全ての DCGユーザーをかき集めることができてようやく、 5 倍の水準となる。 が、ユーザーはすぐに離脱してしまうのでやはり維持ができない。 ゼノンザードは DCG のシステムを改善することに努めたのだが、ゼノンザードが身を もって示したように DCG をいかに改善しても無駄なのである。 DCG の殻を破らない限り、DCG は無限に失敗しつづけるだろう。 

 

※1: そもそも、インフレで壊れたのなら「ゼノンザードはゲームバランスが崩壊しただ けで魅力がなくなるほどの浅いゲーム」ということになる。1 ユーザーとして、ゼノン ザードがそう思われているのが悲しい。インフレなんてソシャゲやカードゲームでは当 たり前にあることであり、ゲームバランスは常に変化するものなので、それを売りにす るのはおかしい。ユーザーとしても注意すべきであろう。  


※2: まず弱いカードのパックは売れない。売れないということは売り上げが上がらない ので、DCG に限らず性能が良いガチャのほうが売れるのである。次のカードは前より強 くないといけないのでインフレは絶対に進むのだ。ゼノンザードの場合、カード追加の ペースが早く、既存デッキの強化よりも新しいデッキコンセプトの登場に重きを置いて いたのでインフレのペースが早く感じられたのだろう。新しいデッキコンセプトのほう が新規がゲームを始めやすいしゲームバランスを取りやすいというのもあると考えられ る。 

ちなみに、ルーンテラや百鬼異聞録の場合はカード追加の仕組みが独特なので前にリ リースされたカードも使いやすいアプローチを採用しており興味深い。 新しいデッキよりも以前からのデッキのほうが強かったりする。デッキの多様性はある ものの相性ジャンケンになりやすくバランスの確保は難しいと考えられる。 

 

※3: 正確には、DCG だけでなく対戦ゲームそのものが厳しい。カードゲームは一対一な のでよりストレスが 貯まりやすい。格闘ゲームが衰退したのと似たようなものだ。最近 で成功している対戦ゲームはいかにプレイヤーのストレスを軽減するかというのを重視 する。バトルロイヤルやチーム戦、非対称 PvP が流行る理由でもある。ソシャゲのラン キング要素でさえ拒否反応を示す人が一定数居るのだ。 

2021年1月11日月曜日

なぜ Switch のコントローラーは壊れやすいと言われているのか?

現在非常によく売れている Nintendo Switch だが、そのコントローラーに関する評判は よいとは言えない。Joy Con も Pro Con もよく壊れており、任天堂は欠陥品を消費者に 売りつけていると大騒ぎ、海外では「ジョイコンドリフト問題」として訴訟にまで発展する始末である


私は本当に任天堂は消費者に欠陥品を売りつけているのか疑問に思ったのである。 あれほど子供が触っても頑丈なゲーム機の設計を行う任天堂が進んでそのようなことを 行うだろうか。 

 

調査を進めてきた結果、ある事実が明らかになった。 最初に結論を言おう。 

 

Switch のコントローラーに他のコントローラーと比較して壊れやすいという証拠は発 見ができなかった。少なくとも XBox, PS のコントローラーと比較して同等の耐久性だ と考えられる。Switch のスティックの故障が話題になったのは一般人がコントローラー のスティックを酷使するほどゲームに夢中になったということであり、これは任天堂の 偉大な功績である」 

そもそも、スティックの部品は PS3, PS4, XBox, Wii U, Switch 全て同じ(アルプス電 子 RKJXV1224005)である。パーツが同じなら、故障のしやすさはどう考えても同じにな るはずだ。 

 

そして調べてみたところ、PS3, PS4, XBox, Wii U 全てに「スティックのドリフト現象 が起こっている」ことが明らかになった。 考えれば当たり前の話だが「スティックは酷使すると壊れるのである」。この事実は 「スマホは落としたら壊れる」と同等に明快である。

 

 しかし明らかに Switch になってからスティックの故障報告が増えている。これはなぜ か、やはり任天堂の陰謀か。そんなことはない。

 

 一つ目の理由は Switch はこれまでのゲーム機と比較してもとんでもなく売れているか らである。売れれば売れるほど相対的に故障も増えるし、話題になりやすくなるのは当 然である。Amazon で顕著だが、売れていない商品はレビューが少なすぎて評判が信用な らないという現象があるだろう。

 

 二つ目の理由はユーザー層である。これまでの家庭用ゲーム機はゲーマー向けであっ た。Switch の場合は Wii 時代のゲームをあまりやらない層や携帯機の層まで掴んでい る。これにより、あまりゲームを遊んでいなかった層が久しぶりに熱中してゲームを やった結果 「コントローラーは故障する」というあたりまえのことに気付いたのであ る。

 

 三つ目の理由はユーザーが遊んでいるゲームにある。コントローラーを壊したユーザー に遊んでいたゲームを聞いてみるとよい。それは「スプラトゥーン」「Fortnite」「ス マブラ」などではないだろうか。FPS ゲームや格闘ゲーム、スティック操作を頻繁に使 うアクションゲームということである。つまり Switch の登場によりカジュアル層にま でスティックを酷使するゲームが浸透した。その結果、酷使されたスティックが故障す るようになったのだ。 

 

「スプラトゥーンは WiiU からあったのだから、Switch 固有の問題ではないのでは」 この指摘は正しい。実際に私も Wii U のスプラトゥーンユーザーがコントローラーを壊 してきた事実を聞いている。Wii U があまりに売れなかったから一部でしか話題になら なかっただけなのである。 

 

昔から周知の事実だが、格闘ゲーマーや FPS のゲーマーは本当によくコントローラーを 壊している。一ヶ月でコントローラーを破壊するのも珍しくない。一般の人達もその領 域まで辿りついてしまったにすぎないのだ。歴史を辿るとニンテンドウ 64、ゲーム キューブのコント ローラーをスマブラプレイヤーは破壊してきている。ドリフト問題も 当然発生している。今起こっている問題となにが違うのだろうか。

 

 「PS2 のころ、PS のころ、SFC のころはコントローラーが壊れなかった」その指摘は正 しい。しかし、当時を思い返してほしい。当時 FPS ゲームなんてなかったし、アナログ スティックを使うゲームも少なかった。格闘ゲームをやらないプレイヤーにはコント ローラーを壊すほど酷使することはなかったのではないか。FPS が盛んになるのは PS3 頃であり、PS3 の頃からスティックのドリフト問題は話題になっている。 

 

任天堂が少なくともコントローラーについては耐久性を考えて設計されているというの は「スティック以外の故障がほとんどない」ことから明らかである。

 

 例えば、PS4 のコントローラーはスティックの故障以外にも「トリガーボタンが壊れ る」という不具合がある。PS5 のコントローラーもアダプティブトリガーが弱く故障し やすいようだ。

 

XBox Elite コントローラーは LB, RB ボタンがよく故障するらしい。 

 

しかし Switch のコントローラーの場合はものの見事にスティックの不具合ばかりであ る。サードパーティ製のコントローラーでよく見られる「ボタンが押しっぱなしになり 戻らない」「充電ができない」「ワイヤレスを認識しない」という不具合は Switch で は聞いたことがない。

 

これから考えられるのは「任天堂はできるだけコントローラーを丈夫に設計している が、一番壊れやすく汎用品であるスティックを丈夫にするのはスティックパーツ自体の 耐久性が上がらない限り困難」ということだ。

 

 そして長年同じパーツが使われているのは改良されたスティックパーツが存在しないか らと考えられる。存在しているならとっくに改良されたものが採用され、任天堂のゲー ム機に限らず世の中にスティックが壊れるということ自体存在しなくなるはずである。

 

 そもそも家庭用ゲームコントローラーはサードパーティ製のものよりしっかりと作られ ている。PC 用のコントローラーの耐久性を調べてみれば分かると思うが家庭用と比較し てもお粗末なものばかりだ。だから PC で家庭用ゲーム機のコントローラーを使う人は 多いのである。家庭用ゲーム機のコントローラーの耐久性にはほとんどのメーカーはか なわないのである。 

 

スティックが壊れるのは現在のスティックパーツの耐久性の問題で難しい。 ならばどうするべきか私も考えたのだが、「スティック部分のみを取り外し可能にし て、簡単にユーザーが交換可能にする」ことしか思いつかなかった。 一部のコントローラーでアナログとデジタルを入れかえられるように取り外せる仕組み になっているものが存在するが、あれと同じ仕組みにするのである。 スティックのみ交換可能ならば修理が簡単で安くすむだろう。 ただしこの方法だと操作性に問題が出る可能性があるので簡単に採用とはいかない。 

 

今回の Switch のコントローラーに関する問題についてだが、誰も嘘はついていないし 「これまでのゲーム機はコントローラーが故障していなかった」のも「Switchを使うよ うになってからスティックが頻繁に故障するようになった」のも事実であり真である。 それでも私が得られた結論は他の人が言っていることとは違っていた。 人の言うことには簡単に惑わされず、事実から真実を見抜けるようになっていきたいも のだ。  


※: ちなみに、他のサードパーティコントローラーがプロコンと比較して耐久度が高いと いう事実も発見できなかった。どのコントローラーを使用してもスティックの故障は発 生するし、任天堂の認証を受けていないサードパーティ製のコントローラーだとス ティック以外の不具合が発生する可能性がある。「任天堂のコントローラーは壊れやす いからサードパーティを使おう」という理由で選択するのはオススメしない。 

 ※: Switch などで使われているスティックパーツの RKJXV1224005 を調査した結果、昔 のものより高 耐久が謳われているパーツであることが分かった。スティックを互換品に変更すると簡 単に壊れるとか。メーカーのスペックシート上でスティック押し込み 5万回、スティッ ク回転 20 万回の耐久性能がある。 つまりメーカーはスティックの耐久性を上げる作業を怠っていたのではなく、高耐久な パーツを簡単に破壊するゲーマーの使い方がおかしい。 

ちなみに今は RKJXV1224005 はディスコンになっているが、RKJXV122400R がスペック同 じで後継モデルのようだ。  

スティックの耐久性能が 200 万回だとして、一年に 1000 時間ゲームをプレーしたら一 時間あたり 2000 回スティックを操作したら壊れる。 普通のアクションゲームでは毎秒スティックを操作することはないと考えられそうだ が、最近流行りの FPS や格闘ゲームでは細かなスティック操作が求められるので 1 秒 に一回のスティック操作だと容易に超過しそうである。