2012年3月18日日曜日

「Emacs 実践入門」は現時点で最良のEmacs入門書である


これは技術評論社より出版された、「Emacs実践入門」に関するレビューです。
私はVimmerですが、これまで出版されたEmacs本のほとんどは読んだことがあります。そういう視点からレビューしたいと思います。

一言でいうと、この本はEmacsの入門書として最適です。
Emacsの本はこれまでいくつか出てきていますが、初心者が読むのに適した本はなかなかありませんでした。

O'Reillyから出ている入門GNU Emacs第三版はよい本ですが、Emacsの基本操作とEmacs標準のEmacs Lispしか書いていません。
さらに出版からもう9年も経つため、内容が古くなってきています。
Emacsテクニックバイブルは拡張機能のカタログであり、Emacsの入門用の書籍ではありません。
Emacs Lispテクニックバイブルは既存の拡張に飽き足らない人が自分でEmacsを拡張するための本です。

このEmacs実践入門はそこまでページ数が多くないにもかかわらず、
Emacsの基礎からEmacsの拡張するEmacs Lispパッケージの紹介まで一通りの解説がされており、賞賛に値します。
この本は最新のEmacs 23/24に準拠しているため、もし出版から年月が経ってもある程度対応できることでしょう。
まだ正式なリリースがされていないEmacs 24についての情報は貴重であり、この本の価値をより一層高めています。

読んでみて驚いたのは、Emacs設定ファイルの記述方法や管理の仕方がとても詳しく書かれていたことです。
今まで自分が知りたいと思っていた情報がよくまとまっていました。
特に、Emacs 24より搭載されるEmacs Lisp Package Archive(ELPA)の解説は貴重です。
anything.elの解説も、Emacsテクニックバイブルほどではありませんが、充実しています。

この本の最後の章では、Emacsの各プログラミング言語用のメジャーモードが細かく解説されています。
メジャーモードはEmacsテクニックバイブルや入門GNU Emacsでも一部解説されていたと思いますが、
これほど分かりやすく、しかも最新のEmacsに準拠して書かれてはいませんでした。
Emacsは各プログラミング言語用のメジャーモードが乱立しており、どれを使えばいいか分からないような状況に陥ることがよくありました。
しかし、この本に書いてあるメジャーモードを導入していれば間違いはありません。
この章はあまり期待していませんでしたが、よく出来ていたのでポイントが高いです。

私がEmacsに出会ったときにこの本が存在し、Windows環境でのEmacsが今ぐらいに使いやすくなっていたなら、
私がVimではなくEmacsを使っていた未来もあったかもしれません。

ちなみに、私がVimmerやEmacs使いに一冊だけEmacsの本を勧めるとしたら、間違いなくこの本を勧めます。
この本に物足りなくなった人は、EmacsテクニックバイブルやEmacs Lispテクニックバイブルを購入すると良いでしょう。
久しぶりに購入して満足した書籍でした。技術書を執筆した一人として、執筆の困難さは痛いほど分かるため、
この本を執筆したtomoyaさんに最大限の賛辞を送りたいと思います。

※:この本ではEmacsのIMとしてSKK(おそらくddskk)を勧めていましたが、初心者にSKKを勧めるのはどうかと思いました。
SKKは設定が複雑だし、慣れるのに時間がかかるため、初心者にはオススメできません……。