2015年5月17日日曜日

HP Elitebook Folio 1020 レビュー


初めに:

私はこれまで使用していた Thinkpad X200 を主に開発作業に使用していました。このマ
シンは気に入っていたのですが、ノートパソコンメインでいろいろな作業をしていくに
あたって不満も出てきました。
そこで最近のノートパソコンについていろいろと調査し、HP の Elitebook Folio 1020
が一番良さそうだったのでこれを購入することにしました。
HP Elitebook Folio 1020 は最近到着し、今ではメインマシンとして使用しています。
残念ながら、日本では Elitebook を購入する人が少なく、購入を検討しても情報を集め
にくい状態が続いています。もしかすると、私の他にも HP Elitebook Folio 1020 につ
いて気になっている人がいるかもしれません。
ここでは旧メインマシンである Thinkpad X200 との比較を中心に、HP Elitebook Folio
1020 のレビューをしようと思います。

良い所:

* ファンレス

Thinkpad X200 のファンと熱に辟易していた私にとって、ファンレスの Elitebook
Folio 1020 はそれだけで選ぶ価値のあるものでした。

MacBookAir は一見ファンレスのようにも見えますが、実は液晶との接続部分に穴があ
り、そこから熱を逃がす設計となっています。Folio 1020 は完全にファンレスで穴も一
切ありません。無音状態の PC は静かで本当によいものです。

ファンレスモデルということで、熱が気になる人もいることでしょう。
Core M は発熱が少ないとはいえ、当然熱はあります。使用しているときは、底面がほん
のり温かくなります。Thinkpad X200 の底面の吸気口と同程度の温度でしょうか。個人
的には吸気口よりも排気口の熱が気になるので、排気口レベルの熱がないぶん助かって
います。

インストール作業などでこのマシンにずっと負荷をかけると、パームレスト部分まで熱
が来ます。この状態はさすがに不快となります。ファンレスの PC に負荷をかけること
はオススメしません。Gentoo Linux や BSD 環境など、毎日コンパイルをするような環
境として利用するのはやめておいたほうがよいでしょう。ファンレスのノートパソコン
は放熱に時間がかかるので、そこにも注意が必要です。

* 質感

MacBookAir のパクリと言われればその通りなのですが、金属のボディは質感が高いです。
この表面はヒートシンクも兼ねているので、熱がノートパソコン表面に伝わりやすいの
で注意してください。

* バッテリ持続時間

Linux 環境でテキストエディタ中心の開発作業をしている場合、 6 〜 7 時間持ちま
す。普段は AC アダプタを接続せずに使用できるので、この程度でも十分です。
Core M は低消費電力なのになぜもっとバッテリが持たないのか、と思われるかもしれま
せんが、薄さを重視した Elitebook Folio 1020 は 4 セル 36Wh しかバッテリ容量が
ありません。アイドル時の消費電力は Core も Core M も大差がないので、バッテリ容
量勝負となります。Broadwell の Core プロセッサのノートパソコンは 6 セルバッテリ
を搭載しているものが多く、そちらにバッテリの持続時間が負けてしまうのは当然で
す。しかし、Haswell ノートパソコンとなら十分戦えるレベルです。

このマシンは長く使いたいので、 1000 回寿命のある高耐久バッテリを採用しているの
もポイントが高いです。

* AC アダプタ

AC アダプタは 45W のものでかなり軽量です。しかし、コードはそれなりに太く、耐久
性が確保されています。実は Core M マシンの消費電力は負荷を掛けても 30W 程度なの
で、45 W の AC アダプタでもオーバースペックだったりします。そのせいなのか、この
マシンの AC アダプタの発熱はほとんどありません。Thinkpad X200 は AC アダプタが
65 W で比較的コンパクトなものの発熱量が大きく、マシンに負荷を掛けた状態では触れ
ません。

* 高解像度

Thinkpad X200 の 1280 x 800 の解像度はさすがに狭いと考えていたので、1920 x 1080
のフル HD 液晶は広々と使えて良いです。ただ、デフォルトの状態では文字はかなり小
さくなってしまい、フォントサイズの調整は大変です。

* 液晶(Special Edition は未確認)

ビジネスで使う場合、液晶がグレアかノングレアかというのは重要な要素になります。
このマシンは幸いなことにノングレア液晶です。おそらく、反射防止フィルムが標準で
貼ってあるのでしょう。このマシンは MacBookAir を真似したモデルだということで、
グレア液晶でも我慢しようと考えていましたが、嬉しい誤算でした。MacBook(Air) は
基本的にグレア液晶なので、ノングレア液晶が好きな人には大きなアドバンテージで
す。

Thinkpad X200 は輝度を最低まで下げても十分画面が見えるほど明るいのですが、この
マシンは画面の輝度を最低まで下げると画面が完全に真っ暗になります。消費電力が気
になる人は輝度を下げるとよいでしょう。

液晶は最近流行の狭額縁モデルではないので注意が必要です。

* サイズ

画面サイズは 12.5 インチですが、本体自体は MacBookAir 13 インチとほぼ同じくらい
のサイズです。そのため、MacBookAir 13 インチと同じケースが使用できます。12 〜
13 インチはモバイルにも自宅でも使えるサイズです。その分中途半端になるかもしれ
ません。MacBookAir 11 インチよりも明らかに大きいので、モバイル向けの小さい
ノートパソコンが欲しい人は注意してください。

* キーボード

キーピッチは 15mm〜17mm とアイソレーションキーボードにしては十分に確保されてい
ます。私自身は特に打ちやすい、打ちにくいとは思いませんでしたが、Thinkpad X200
ユーザーが違和感なく使えるアイソレーションキーボードはそれだけですごいのかもし
れません。ボディの剛性感があるからか、キーボードがたわんだりもありませんでし
た。

個人的にこのマシンが優秀なのは、キーボードの配列です。使用頻度の低いキーは Fn
との同時押しになっており、まるで MacBook のように余計なキーがありません。
このあたりが考えられていないノートパソコンだと、明らかに使いにくいキーボード配
列を用意していたりします。

ただし、私は日本語配列の Elitebook Folio 1020 を持っていないため、日本語配列モ
デルに関する感想は差し控えます。残念ながら Elitebook Folio 1020 の日本語版の資
料は公開されていないようですので、日本語配列が気になる人は姉妹機である
Elitebook Folio 1040 のキー配列をチェックするべきでしょう。

* 重量

標準モデルで 1.2 kg と MacBookAir 並の重量なので、さすがに Thinkpad X200 + 6 セ
ルバッテリよりはかなり軽いです。とはいえ、このマシンは薄いだけに見ためより
ちょっと重いのは事実です。モバイル用途として毎日持ち歩くには覚悟が必要で
しょう。Special Edition なら約 1kg のようですが、私は Special Edition を持って
いないので感想は差し控えます。
個人的にはあまりノートパソコンは持ち歩かないのですが、ノートパソコンの重量が軽
いと家の中でも扱いやすいのでよいです。

* 性能

Core M だから性能が悪いのではと思う人がいるかもしれませんが、それでも Haswell
Core i5並の性能はあります。メモリも標準で 8GB あり、普通の開発作業やブラウジン
グには十分です。CPU 自体は仮想化支援にも対応していますが、仮想化した Linux で
GUI を楽しむような作業には向かないので注意してください。そういう用途には Vaio Z
のようなモンスターマシンを採用するべきです。

このマシンで特筆すべきはストレージの性能です。ストレージの高速性はあまり謳われ
ていませんが、UEFI 画面を抜ければ二秒で OS が起動するほど高速です。これくらいの
起動速度ならば毎日シャットダウンを繰り返すような運用でも問題ないでしょう。


悪い所:

* タッチパッド

Thinkpad X200 のトラックポイントは開発作業にはよいもので、ファンも多いです。し
かし、トラックポイントは移動量が多いと指先に負担がかかります。私はトラックポイ
ントの使いすぎで腱鞘炎になりかけたので、自分の使い方にはトラックポイントが合わ
ないと思いはじめました。そこで、次に購入するノートパソコンはタッチパッドモデル
にしました。

このマシンはタッチパッドの広さは十分確保されており、タッチパッドのさらさらとし
た質感は MacBookAir にも似て操作しやすそうに感じられます。しかし、このタッチ
パッドには物理的ボタンがありません。タッチパッドの下方向を押すと左クリック・右
クリックになります。クリックの反応が良すぎて、シングルクリックがダブルクリック
になってしまうこともよくあります。

Windows 環境ではクリック時にスピーカーから音がなります。微妙です。
Windows 環境ではマルチタッチでの操作に対応していたので試しましたが、これも微妙
です。拡大・縮小はなんとか操作できないこともないですが、スクロールは反応が悪
く、意図せずカーソルが動いてしまったりします。

Linux 環境ではタッチパッドがなぜかマウスとして認識されます。タッチパッド用の設
定が認識されないので、キーボード入力時にタッチパッドが反応してストレスが貯まり
ます。今はテキストエディタの設定でマウスを無効化してしのいでいる状態です。Web
ブラウジングもキーボード中心で操作するように矯正中です。

正直言うと、New MacBook のフィードバック付きタッチパッドが欲しいです。

* 価格(ただし英語モデルのみ)

これは日本 HP 特有の問題だと思いますが、簡単に英語配列にできる Lenovo や Apple
とは異なり、英語配列モデルは完全に別モデル扱いで、しかも英語配列モデルには各種
キャンペーンが適用されないので割高となります。

5/13 日現在、MacBookAir 13 インチ 8GM メモリ 256GB SSD は \148,800 (税抜)です。

5/13 日現在、日本語版 Elitebook Folio 1020 G1 12.5 インチ 8GM メモリ 256GB SSD
は \134,000 (税抜)です。

5/13 日現在、英語版 Elitebook Folio 1020 G1 12.5 インチ 8GM メモリ 256GB SSD は
\173,000 (税抜)です。

実際に比較してみると、英語配列モデルの方が約 3 万円も高価です。残念ながら、英語
配列スキーの未来は暗いです。日本語配列でもよいのなら、MacBookAir よりも安いので
十分魅力的でしょう。

* インタフェースは最小限

お手本となった MacBookAir と同様、インタフェースは最小限しかありません。
勉強会でプレゼンをする人には VGA 端子がないのは不便ですし、
デジカメを使う人には SD カードスロットがないのは困ることでしょう。
いまだに有線 LAN が必要な人もいるかもしれません。
私は有線 LAN, VGA のアダプタを購入しました。

* 画面が一杯まで開かない

ほぼ 180° 画面が開く Thinkpad とは異なり、このマシンの画面は 120〜150° 程度ま
でしか開きません。通常の作業には十分ですが、画面の角度を調整したいときには困る
場合もあります。

* Linux を動作させるにはコツが必要

このマシンに Linux をインストールして開発作業を行いたい人もいるでしょう。
しかし、最近の HP のマシンはデフォルトで Windows 8 以外の OS は拒否される設定と
なっています。起動 CD から Linux のインストールに成功しても起動に失敗してしまう
のです。

以下のドキュメントに書いてある通りに UEFI の設定を変更してください。
えっ、書いてあることの意味が分からない? 残念ながら、そういう人はこのマシンに
Linux をインストールしないほうがよいでしょう。

https://wiki.archlinux.org/index.php/HP_EliteBook_840_G1

その他に注意すべき点としては、GRUB の UEFI のモジュールにはマイクロソフトによる
署名付きと署名無しのものがあるということです。
例えば、Ubuntu は署名付きのモジュールを提供していますが、Arch Linux や Manjaro
Linux 等は提供していません。
署名無しの GRUB をロードさせるためには、UEFI 画面でセキュアブートを無効化する必
要があります。セキュアブートが有効のとき、署名無しの GRUB を読み込ませようとす
ると拒否されます。

まとめ:

もちろんこのマシンは幾つか欠点もあり完璧ではありませんが、
ここ数年の中では名機と呼ばれるポテンシャルを秘めた PC だと思います。
少なくとも私は気に入っています。
ファンレスノートパソコンに興味があるなら、HP Elitebook Folio 1020 をぜひ検討し
てみてください。