2021年3月2日火曜日

なぜゼノンザードはサービス終了してしまったのか

 先日、私がサービス開始からプレーしていた DCG であるゼノンザードがサービスを終了 した。私のゼノンザードに対する思いを整理するため、「なぜゼノンザードはサービス 終了してしまったのか」について考えてみたい。 

 

世間でのゼノンザードの評価は「コンセプトとしては面白いゲームだったけど、カード 追加でバランス崩壊してしまったからサービス終了した残念なゲーム」だそうである。 カード追加でインフレがあったのは事実であるが、サービス開始から見てきた私に とって、それがサービス終了の直接の原因であったとは思えない(※1)。  


結論を言おう。「ゼノンザードは DCG であったからサービスを終了した」これは 残念ながら事実だ。直接の原因は「売り上げが伸びなかったから」であるが売り上げが 伸びないのは DCG だからである。急速にインフレしたのも「DCG として売り上げを伸ば すため」と言ってよい(※2)。 

 

そもそも考えても見てほしい、巷で生き残っている DCG は本当に DCG だから売り上げ が伸びている生き残っているのだろうか?  


シャドウバースは日本人に馴染みのあるイラストと黎明期から続くことの先駆者利益、 豊富な配布と宣伝、敷居の低さにアプリの完成度の高さ、e-sports 化で生き残ってき た。 

遊戯王デユエルリンクスは遊戯王のファンが楽しむためのゲームである。ここには OCG のファンとアニメのファンを含む。 

ドラゴンクエストライバルズはドラゴンクエストのファン層が中心であり、原作の再現 やファンサービスを大事にしている。 

デュエプレは昔からデュエマを楽しんでいた層が主に楽しんでいるのであって、純粋な DCG のプレイヤーはかなり少ない。 

ハースストーンについては DCG の始祖として知名度がものすごく高く、カジュアルでテ ンポのよいゲームプレイが特徴。海外のプレイ ヤーが中心に支えている。実際にプレー してもマッチングするのは海外ばかりであり、日本のユーザーだけではとてもじゃない が存続できないだろう。

MTGA は MTG の販促であり、完全に MTG の一部である。 

 

DCG の戦略性を売りにして存続しているゲームは一つもない。DCG 化は売り上げ低下の 要因になりこそすれ、上昇の因子にはなりえないと断言しよう。 DCG はカードパックを売らなければ集金できない、天井がある、ユーザー層が狭い、資 産を増やしやすいゲームバランスに厳しいと売り上げについては散々である。毎週限定 キャラ出すだけで集金できる他のソシャゲを見てほしい。なんと楽なことか。 


ゼノンザードは DCG の中堅であったので知名度はそんなに低くない。サービス終了時も 嘆く声がよくあった。しかしソシャゲの売り上げで考えると DCG の中堅はソシャゲ界の 底辺、とてもじゃないが安定して運営を続けられる状態にはなかった。DCG のトップレ ベルでようやく中堅レベルの売り上げになり生き残ることができるのである。生き残り のためには、どうしても DCG のトップ層を目指すしかなかったのだ。ちなみに DCG 底 辺のポジションはそもそも売り上げが計測できないレベルであるので論外だ。 売り上げが底辺でも生き残っている DCG があるって?それは本当に生き残っていると言 えるのか。更新が止まり放置されているだけではないか。更新の終わったソシャゲは終 わったも同然だ。 

 

もちろん、ゼノンザード運営は「現代において DCG の成功が厳しい」ことは百も承知で ある。だからこそゼノンザードでは新しい試みをしており、ある程度の成功も収めるこ とができた。 ゼノンザードは AI という要素を導入することで紙のカードゲームに近い体験を実現す るとともに DCG の 敷居を低くし、更に AI にキャラクター性を与えてシナリオも凝る ことで従来とは違ったユーザー層を獲得しようとしたのだ。  


私はこの狙い自体は間違っていないと思っている。ゼノンザードのユーザー層も他の DCG とは異なっており DCG 層 (カードゲーム層)とキャラゲー層に分かれていた。双方 が楽しめるゲームであった。問題だったのは両方の層を楽しませようとしすぎていて結 果として中途半端に終わってしまっていたことである。特にキャラゲー層の人達は自分 達が軽んじられていることで不満を持っていたようだ。 

 

例を上げる。マスター以上では最初アドバイスが使えなかったり、ストーリーの更新頻 度が遅かったり、コードマンのスキンがイラストのみで実装される人数を減らされたり していた。アニメについても、できるだけ人数を出そうとしたのかオムニバス形式なの が中途半端である。せっかくある程度の話数があるのなら、出番がないキャラが出ると いうリスクをしょってでも一つのストーリーラインを作って物語を終わらせるべきで あった。  


キャラクター性を重視している私の意見であって DCG 層の方々には申しわけないが、ゼ ノンザードは売り上げの面を見ても最初からいかに誰でも遊べるかキャラゲーの層を重 視すべきだったと思う。ゼノンザードは DCG であることをどうしても捨てることができ なかった。あくまでも DCG の補助としての AI であったのだ。これは一つの敗因だ。 私は最近気付いてしまったのだが、自分自身 DCG 層ではなくキャラゲー層であり、だか らこそ他の DCG は続かなかったがゼノンザードを最後まで続けることができた。 バディと一緒だからこそ戦えた。夢中になれた。 ゼノンザードは最後に公開されたストーリーで全ての伏線を回収し、きちんとストー リーラインが考えられていることが判明されているので、このまま終わってしまうのが 惜しいと思った。個人的にはゲームバランスなんてどうでもよいと思ってさえいる。 

 

ゼノンザードはシャドウバースをかなり意識していたようだが、DCG として成功するに はシャドウバースの二番煎じではだめである。一時的にシャドウバースからユーザーを 獲得することができても すぐに元のゲームに戻ってしまう。先駆者利益というのはそれ だけ大きく、ユーザーは保守的なのだ。  


私が昔プレーしていたウォーブレ(WAR OF BRAINS)でも似たような話があったのを思い出 す。シャドウバースの環境崩壊によりウォーブレにも人が沢山流れたが、その後のカー ドパック実装で沢山のバグとバランスが崩壊すると移住した人達はすぐに消えた。 

 

国内であまり売り上げが伸びなかったため、ゼノンザード運営は海外に進出しようと考 えていたようだ。確かにアニメは海外で大人気であた。私もそれに希望を持っていた。 これも蓋を空けると失敗に終わってしまった。日本以上に売り上げが出ていないのである。 日本での DCG の成功は厳しい(※3)が、海外だと更に厳しいということを思い知らされた。 ちなみに、海外展開を考えてもゼノンザードはキャラゲーとしてアピールするべきだっ たと思うのだがどうか。  


私が以前プレーしていた DXM も一時は海外展開を模索していたが国内展開に注力するた めに結局やらなかったことを思いだす。もし DXM が海外でリリースしていたとしても 結局は成功しなかったであろう。あれはよくできていたが、ゲームとして硬派すぎたの だ。 

 

オマケとして、なぜ「バトルスピリッツが DCG にならなかったのか」についても少し考 えてみたい。これは他のカードゲームと比較してバトルスピリッツ単体の知名度が低く 大きな売り上げが期待できないからではないだろうか。デュエマレベルの知名度がない と成功できないということである。ヴァンガードゼロレベルの売り上げは見込めるかも しれないが、その程度では物足りないだろう。オリジナル IP のほうがまだ可能性があ る。  


ゼノンザードの続編となる AI カードダスの第二弾が今後発表されるかもしれないが、 そのときには今回の失敗をよくよく考えてほしいものである。 

 

最後に私の考えるゼノンザード2 の構想について述べようかと思う。 これは厳密には DCG ではないだろうが、他のソシャゲにわざと仕様を似せることで敷居 の低さを重視した、売り上げの増加を狙ったと考えてほしい。  


コードマンをガチャで入手する。コードマンは 100 体以上いるという公式設定があった はずなので数を増やすことは可能だ。アウロスギアをガチャで入手でもよい。 カードは装備品相当となる。 基本的にバトルは AI に任せるオートだが、AI 育成の要素や人間が戦略性を発揮する部 分も用意する。コードマンのレベルが上がることで強くなる。 バトルで勝ち進み、ランクを上げることでストーリーが展開していく。 ストーリー上の大会のようなトーナメント形式も欲しいところなのである。ストーリー とゲーム性をいかにリンクさせるのかがポイント。 

 

補足として、売り上げは人口に比例するためゼノンザードはあとどのくらいユーザーを 集める必要があったか検討すると「最低 5倍、できれば 10 倍を維持すること」である。 これは普通の DCG では不可能な水準であることがちょっと考えるだけで分かるだろう。 普通に DCG を作って成功してもゼノンザード程度の売り上げがせいぜいであり、全ての DCGユーザーをかき集めることができてようやく、 5 倍の水準となる。 が、ユーザーはすぐに離脱してしまうのでやはり維持ができない。 ゼノンザードは DCG のシステムを改善することに努めたのだが、ゼノンザードが身を もって示したように DCG をいかに改善しても無駄なのである。 DCG の殻を破らない限り、DCG は無限に失敗しつづけるだろう。 

 

※1: そもそも、インフレで壊れたのなら「ゼノンザードはゲームバランスが崩壊しただ けで魅力がなくなるほどの浅いゲーム」ということになる。1 ユーザーとして、ゼノン ザードがそう思われているのが悲しい。インフレなんてソシャゲやカードゲームでは当 たり前にあることであり、ゲームバランスは常に変化するものなので、それを売りにす るのはおかしい。ユーザーとしても注意すべきであろう。  


※2: まず弱いカードのパックは売れない。売れないということは売り上げが上がらない ので、DCG に限らず性能が良いガチャのほうが売れるのである。次のカードは前より強 くないといけないのでインフレは絶対に進むのだ。ゼノンザードの場合、カード追加の ペースが早く、既存デッキの強化よりも新しいデッキコンセプトの登場に重きを置いて いたのでインフレのペースが早く感じられたのだろう。新しいデッキコンセプトのほう が新規がゲームを始めやすいしゲームバランスを取りやすいというのもあると考えられ る。 

ちなみに、ルーンテラや百鬼異聞録の場合はカード追加の仕組みが独特なので前にリ リースされたカードも使いやすいアプローチを採用しており興味深い。 新しいデッキよりも以前からのデッキのほうが強かったりする。デッキの多様性はある ものの相性ジャンケンになりやすくバランスの確保は難しいと考えられる。 

 

※3: 正確には、DCG だけでなく対戦ゲームそのものが厳しい。カードゲームは一対一な のでよりストレスが 貯まりやすい。格闘ゲームが衰退したのと似たようなものだ。最近 で成功している対戦ゲームはいかにプレイヤーのストレスを軽減するかというのを重視 する。バトルロイヤルやチーム戦、非対称 PvP が流行る理由でもある。ソシャゲのラン キング要素でさえ拒否反応を示す人が一定数居るのだ。 

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